ぼくは実際に介護現場で働くまでは、
「介護職の人たちは、低賃金に苦しんでいる」
と、思っていました。
でも、実際に4か月間、介護現場で働いてみて、ほとんどの介護職の人たちは特に苦しんでもいないし、より高収入を得たいとも思っていないことに気がつきました。
介護にかかわらず、より多くの収入を得るためには、それなりの戦略が必要です。
『与えられた仕事をしていればいい』という発想では、その状況はなかなか変わりません。
ただぼくは、向上心がある介護従事者の方々は、高収入を得るに値する非常に高度な仕事をされていると考えていますし、『高付加価値の介護』に取り組むことで、実現可能だと思っています。
今回は、おせっかいなことですが、ぼくが考えた介護士が高収入を得るための4つの戦略を提案させてください。
『その』介護では絶対に賃金が上がらない
まずは『介護』の仕事としての構造的な問題を指摘しておきます。
介護はそもそも、女性や、老人でもできる仕事と思われていました。
おむつを交換したり、風呂に入れたり、トイレに誘導したり、食事の介助をしたり、ほりさげると高度な技術が必要なものの、その技術をきちんと評価する仕組みや、制度が欠けていました。
そのため現場はどうなっていたのでしょうか?
現場は、勤務年数に比例した年功序列にきわめて近いかたちになっています。
すなわち、技術や知識では評価されず、ただ長く働いた人間が偉くなってしまう世界です。
「よりよい介護を提供したい」
と長く働いた人たちが考えていれば、当然なんの問題もありません。
しかし、現実的に介護現場でただ長く働いている人たちにはその意欲が欠けていることがほとんどです。
実際にぼくが接した範囲では、休日はパチンコや競馬、スマホゲームやテレビに時間を奪われ、一日の仕事が終わればくたくたで、新たな知識を得ようと努力する人は稀でした。
おむつを交換したり、ベッドの準備をしたり、被介護者をお風呂に入れたり、食事させたり、トイレに連れていくことが仕事だと思っているうちは、賃金は滅多にあがりません。
絶対に選んではいけない介護現場
『介護』と一口にっても、さまざまな現場があります。
ただ、絶対に選んではいけない介護現場は、作業だけをさせる介護現場(病院に多い)です。
より高収入を得るためには、提供できる介護の付加価値を高める必要があります。
作業(おむつ交換やシーツの準備など)のみの現場では、いくらその作業に熱心に取り組んでも、一生同じ仕事をし続けることになります。
常に自問しなければならないのは、
介護の付加価値はどこにあるか?
です。
利用者の方に罵声を浴びせる介護に価値はあるでしょうか?
(実際に責任者の立場の人間がそんな愚かな行動をしていました)
ことあるごとに褥瘡をつくってしまう介護に価値はあるでしょうか?
(病院での介護では、介護ではなく看護のため、褥瘡は頻繁にできていました)
利用者の方より、看護師や医師の意見を尊重する介護に価値はあるでしょうか?
(これも病院ではあるあるです。多くの場合で利用者の人権は損なわれていました)
ぼくが働いていた病院では、身体拘束ありあり、かつ、介護士のモラルが低かったので、罵声も褥瘡も日常茶飯事でした。
介護業界が抱える構造的な問題
介護業界には、
「介護関係の資格は国からカネをもらいながら得ることができる」
という構造的な問題があります。
ぼく自身、職業訓練で『介護実務者』という資格を取得しました。
現在は介護初任者、介護実務者、介護福祉士の3層構造ですが、介護実務者より上級の『介護福祉士』も、月15万円程度の手当をもらいながら、取得することができます。
介護には、
きつい肉体労働→人が来ない→失業者に資格→意識の低い現場
という流れがあります。
専門学校に通い、資格を取ったり、短期講座等にお金を払って介護の勉強をしている人たちにこそ、介護業界を変えてほしいですが、多くの働き手の実情も同時に知っておいてほしいです。
介護業界を変えるためには、
やりたい仕事→人が来る→人を選び、育てる→意識の高い職場
という流れにする必要があります。
前述の構造に支配されている限り、介護現場は変わらない慣性の力が働いています。
誰でもできる仕事は、たとえ人がやりたがらない仕事でも、収入があがることはありません。
それは介護士でも、清掃員でも同じです。
介護士が高収入を得るための4つの戦略
ぼくが考える『介護士が高収入を得るための戦略』はこの4つです。
- 誰にでもできる介護→自分にしかできない介護
- 介護する→介護を教える
- 労 働 者 →経営者
- 労 働 者 →個人事業主
誰にでもできる介護→自分にしかできない介護
まず最初に、介護のプレイヤーとして高収入を目指すためには、
誰にでもできる介護から、あなたしかできない介護
へとスキルアップする必要があります。
たとえば、
- 誰よりもうまく周辺症状を抑えられる!
- 独自のコミュニケーション手法で認知症の進行を軽減できる!
- あなたが介護すれば、自立につながる!
とか、差別化する方法はさまざまに考えられます。
職業訓練校で教わっていた先生が実践していたのは
- 抑制ゼロでも無事故にする介護
- 腰の負担を軽減する介護
でした。
超高齢社会のいま、介護に関わる人たちのすそ野は広大です。
あなたしかできくて、かつ、ニーズのある介護のかたちは必ずあります。
自分にしかできない介護のつくり方は、『紳竜の研究』で島田紳助氏が語っている売れる漫才師のつくり方が参考になります。
自分の強みと、時代のニーズを突き止めることで、
よのなかに必要とされる自分にしかできない介護技術を開発しましょう。
ただし、ほとんどの職場は能力を評価して、
給料を上げる仕組みにはなっていないため、
自分に見合った給料を支払ってくれる施設を探し続ける努力は必要です。
介護する→介護を教える
次に、高収入目指す方法は、
現場で働く側から教える側にステップアップする
ことです。
ぼくは「現場こそが大切」と思う人間ですが、
教える側のほうが(肉体的な)負担が少なく、給料が高い
のは真実です。
だから、常に先生になれるチャンス(コネが多い)を探しましょう。
また、それにあわせて、介護技術や介護に関する知識を高めていきましょう。
職業訓練校の先生方には、介護現場を兼務している人もいましたが、
講師業専門の人や、自分で新しい福祉法人を運営している人もいました。
ハイスキルな先生たちが口をそろえていっていたのは、
「ステップアップに必要な介護技術や資格を習得しなさい。
そして、それを買ってくれる場所をみつけなさい。」
という話でした。
地域の介護系のセミナーに積極的に参加してみましょう(まずは無料のセミナーでもかまいません)。
そこで、ピンとくる講師の人を見つければ、とにかく積極的に質問したり、連絡先を交換したりすることでコネクションをつくっていきましょう。
労働者→経営者
介護に限らず、すべての仕事にたいして言えることですが、
雇われ労働者の最大の問題点は、自分で報酬を決められない
ことにあります。
だから労働者から経営者になるというのが、高収入を得るためのひとつの方法です。
しかし、ハードルは高いです。
自分で新しい福祉法人を運営している先生は、
まだ40代でしたが、介護知識や介護技術の権化みたいな先生でした。
介護現場で求められることと、経営で求められることは根本的に違います。
次項の『労働者→個人事業主』のところで、
コツをつかんでからチャレンジすることをおすすめします。
労働者→個人事業主
経営者になるのはハードルが高いですが、個人事業主としては大いに可能性があります。
具体例をあげると、
- セミナー講師(および教師)
- 情報発信(ウェブ→書籍)
- 個人塾
がおすすめです。
個人事業主として活動するにあたってのポイントは、なるべく初期投資が少なく、利幅(儲け)が大きいものが狙い目です。
さらに実働がなくとも、収益が入ってくるようなストック型のビジネスであれば、なおよいです。
セミナー講師(や教師)は、
行政とのコネや、介護学校や、職業訓練校とのコネが必要ですが、毎週必ずどこかで開催されているほどニーズがあるので、きちんと営業をかけていけば、仕事は手に入るはずです。
情報発信は、
時間がかかりますが、「あなたしかできない」仕事をつくるために、 とても重要な役割を果たしてくれます。
『下流老人 一億総老後崩壊の衝撃』という書籍をご存じでしょうか。
著者の藤田孝典氏はこの本をきっかけに、『貧困』問題に関する論者として一躍有名になりました。
藤田氏は貧困問題を食い物にして、自分自身の生活の安定を勝ち得ました。
(ぼくは藤田氏の講演を実際に聞き、非常にネガティブな感想を持ちました。詳細はこちらの記事に書きました。)
藤田孝典氏の『貧困』という切り口が受けたように、ほとんどの国民が介護と関わらざるを得ない日本では、切り口次第で、いくらでも可能性があるといえる。
また、情報発信についてはTwitterなどのSNSが欠かせません。
zakkeyさんは介護士としてうまく情報発信をされていると感じます。
興味がある方はぜひ参考にしてみてください。
SNSによる情報発信では、田村淳さんのこちらの書籍が参考になります。
個人塾は、
個人で塾をひらいて、ニーズのある介護スキルや情報を教えるビジネスです。
個人塾の対象は、高齢者でもいいですし、その家族でもかまいません。
ニーズがある企画を生み出し、生徒を集めれれば成功です。
現在、日本の財源は枯渇しており、福祉についても年々、締めつけが厳しくなってきています。
とある先生は、市役所が教えたがらない介護関係の手続きを市民に教える講座を開いていました。
実際に介護現場で働いてみて、介護業界の人と、そうではない人の間には、想像以上の情報格差が存在していると感じました。
このギャップこそ、価値(ビジネス)の源泉です。
また、知人に『茶飲み塾』と称して、高齢者向けに個人塾を主催している人がいます。
内容は『認知症にならないための生活改善』で、要介護者ではない高齢者を対象にして、塾ビジネスを成功させていました。
まとめ
以上。ぼくが考える介護士が高収入を得るための4つの戦略を説明しました。
介護に限らず、すべての仕事において、応用できるヒントがあると思います。
少しでも参考になるところがあり、有効活用していただければ何よりです。
また、仕事以外でお金持ちにになる方法はこちらにまとめています。
仕事と資産運用の2つの軸で、厳しい現代を乗り切っていきましょう。